オッサンの昔話 第4話 ~比留間さん~
人にはそれぞれ生まれ持ったエネルギーがあります。
生まれ持ったエネルギーとは、生まれつき脳内物質の出が良い/悪い、筋肉量が多い/少ない、血流の良さ/悪さなど、その人のいろんな生き物としての体のつくりで決まります。
私も比留間さんも、生まれ持ったエネルギーが低いです。
以前、「常識は環境で作られる」と描きました。
比留間さんの場合、父からの暴力が「環境」でした。
その環境によって、暴力が常識になります。
エネルギーが強ければ「暴力を与えること」が常識になり、
エネルギ-が低ければ「暴力を受けること」が常識になります。
彼女はエネルギーが低かったので、暴力を受けることが常識になっていました。
そしてそれから数年後、恋人からも暴力を受けていたのです。
闇は連鎖するのです。
普通であれば暴力を振るう人とはあまり一緒にはなません。
暴力が常識になっていたことで、何が暴力なのかもわからないのです。
常識とはそういうことです。
これは手を上げる暴力に限らず、言葉の暴力、態度での暴力など、何でも同じです。
よく、毒親に育てられた子供も将来毒親になりやすいといいます。
これも連鎖です。
「暴力」を「すごい意地悪」と言い換えてみます。
毒親とは子供にすごい意地悪をする親のことです。
そうすると子供はすごい意地悪が常識になります。
エネルギーが強ければ「すごい意地悪を与えること」が常識になり、
エネルギーが低ければ「すごい意地悪を受けること」が常識になります。
そして将来親になった時ですが、子供は弱い存在です。
たとえ自分がエネルギーが低かったとしても、子供のほうがエネルギーは低いです。
なので、「すごい意地悪を与えること」のほうに傾きやすいです。
もちろん、すごい意地悪を与えているつもりはありません。
常識になっているからです。
ちなみに、これは子供相手とは限りません。
配偶者に対し「すごい意地悪を与えること」を出してしまうこともあります。
これも、すごい意地悪を与えているつもりはありません。
以前ブログを書いたおすすめ漫画「ど根性ガエルの娘」の5巻が、そこについての内容でした。
また、自分が成長してエネルギーが強くなった場合、毒親本人に対してすごい意地悪の反撃をする場合があります。
そのうちの一つは「トラウマ返し」と呼ばれるものです。
いずれの場合も、すごい意地悪を受け続けたことでいびつな常識が身についた結果です。
比留間さんはとても気が合う女の子でした。
大人しいけどいつもいたずらっぽくニヤニヤしていて、こちらのしょうもない興味ないような話もニヤニヤしながら聞いてくれて、ちょっとひねくれたような返しで笑わせてくれるのです。
エネルギー低い者同士、一緒にいてとても安心する人でした。
エネルギーが低いからこそ、受身のコミュニケーション力が身についていたのでしょうね。
そしてエネルギーが低いからこそ暴力に対して無力だったのです。
彼女の生まれつきの特性が、彼女の良さにも不幸にもつながっていたとすると悲しいことです。
もう一つ、「見捨てられ不安」という心の動きがあります。
これは親が子の存在そのものを雑に扱うことで起こります
雑に扱うとは「すごい意地悪」もそうですし、逆に「無関心」にもあてはまります。
子供は親に執着します。
これは本能です。
野生であれば子供は親と一緒に行動しなければ飢え死にしたり他の動物に食べられてしまうからです。
その親に雑に扱われる=見捨てられるとしたら、野生では子供は死んでしまいます。
なので、それを避ける本能によって子供はどんなに親が雑でも受け入れてしまいます。
これが執着です。
親から雑な扱いを受けていると、いつ自分が見捨てられて飢え死にしてしまうかという恐怖を持ち続けます。
そしてこれは親だけでなく社会からも見捨てられる不安に発展します。
子供が小さかった頃、親は社会の全てだったからです。
これが見捨てられ不安です。
そして見捨てられないために、相手を受け入れます。
どんなに暴力を受けても、受け入れていたのが比留間さんでした。
いびつな常識も見捨てられ不安も、成長していろんな人との関わりの中で「これはおかしい」と気づくことが多いです。
・・・が、以前の共依存ちゃんの回で描いたように、いびつな常識を持っていると、いびつな人と相性がいいです。
そのため、いろんな人と関われるはずがやはりいびつな人とばかり関わっていたということも多いです。
その場合、いびつな常識には気づけません。
ちなみに比留間さんはビジュアル系ファンでしたが、他にも今までに何人かビジュアル系ファンの子と知り合いました。
私の妻もそうでした。
みんなだいたい病んでました。
「かっこいい」とは絶対的なものです。
不安定な人ほど絶対的なものに惹かれるのかもしれません。
90年代の後半にビジュアル系ブームがありましたが、それも世紀末だし景気も悪くなってきたしということで不安定な人が多かったのかもしれません。
比留間さんは中学のときはBUCK-TICK(バクチク)というバンドのファンで、後に再会したときはROUAGE(ルアージュ)というバンドも追いかけていたようです。
でもグイグイと推しメンについて熱弁するわけではなく、私のわかる範囲で話してくれるのが、エネルギーの低い彼女らしかったのを覚えています。
バクチクは私も中学から現在まで好きです。
それは比留間さんの存在があったからというのも大きいです。
新作が出ると、比留間さんもまだ好きなのかなとちょっと考えます。