オッサンの昔話 第6話 ~榎本さん~
場面緘黙症という言葉はここ数年で知りました。
榎本さんは小学校から一緒でしたが、9年間で一回も声を聞いたことがありませんでした。
他にも、中学からの同級生でもう一人、同じく場面緘黙症の人がいました。
こちらも3年間一度もしゃべりませんでした。
当時は究極に大人しい人と思っていました。
声の出ない病気と思っていた人もいたと思います。
でもこれは
社会に対する不安感が強い
↓
萎縮する
↓
だまる
↓
しばらく続く
↓
今さら自分が話し出すとみんながなんていうだろう
↓
ますますだまる
・・・という仮説があるようです。
そのためリラックスできる家庭内では喋れることが多いようです。
口数の極端に少ない友達で、山田くんという人もいたのですが、
榎本さんの大人しさは、山田くんの口数の少なさとはまた違うものでした。
例えば、山田くんの場合は口数が少ないとはいっても、何か話しかければ何か返ってきます。
しかし榎本さんは、話しかけると少し困ったような表情をしてうつむいてしまうだけでした。
そのため、ただの大人しいだけではないんだろうなということですごく印象に残っていました。
最近HSPという言葉もよく目にします。
こちらとも関係あるのかもしれません。
私自身も思い当たることがあります。
今も昔も私は文化系でノンビリしているため、初めて保育園に入ったとき、初めて小学校に入ったとき、他の子供たちの元気さに圧倒されていました。
なので保育園ではよくシクシク泣いていましたし、小学校も低学年のときは同級生の男子が恐くてなじめませんでした。
女の子とばかり遊んでいました。
少し前のエントリーでエネルギーについて書きました。
たまたま自分のエネルギーが生まれつき低く、 たまたままわりのエネルギーが高く、たまたまなじむチャンスがなかった等、たまたまが重なって喋れなくなったパターンが場面緘黙症であると仮定すると、すごくしっくりきます。
私の場合も生まれつきエネルギーが低いのですが、たまたま運よくファミコンという男子全員をとりこにした新しい遊びがあったので、ファミコン経由でクラスになじむことができました。
完全に運がよかっただけです。
保育園のシクシクノリが小学校でも続いていたら、場面緘黙症・・・かはわかりませんが、不登校だったり朝におなかがいたくなる等、何かイレギュラーな症状が出ていたかもしれません。
誰でも緊張すると体が堅くなります。
田舎でシカや猿が車道にヒョイっと出てきたとき、向かってくる車を見て驚いて固まってしまうこともあります。
それの延長で、自分のエネルギーが負けているとき、ウッっと固まってしまうのは、生き物が基本持っている性質なのではないでしょうか。
さて、我々の小中学校は隣同士にあって、小1から中3まで環境があまり変わりませんでした。
そのため、榎本さんの環境は9年間変わることがなかったので、ますます苦しかったろうと思います。
「喋らないキャラ」が定着してしまい、本人的にもますます口を開くチャンスはなかったと思います。
中には意地の悪い人もいました。
意地悪はしなくても、色眼鏡で見てしまうこともありました。
環境が変わることが、場面緘黙症からの回復のきっかけになることがあります。
榎本さんもそうでした。
9年ぶんの「今さら自分が話し出すとみんながなんていうだろう」がなくなりますし、周りのエネルギーも変わりますしね。
これのすごーく軽いバージョンで、「進学のついでにキャラ変更だ!」程度であれば誰にでも理解できるのではないでしょうか。
ちなみに不良っぽくなっていますが、当時は不良がおしゃれであったというだけです。
榎本さん自身がなにかワルだったというわけではありません。